この春に、一年点検を行い、
この夏、その手直し確認に伺いました。
設計事務所に点検の義務はないのですが、
木の住まいは生き物であり、
一年の四季を通じて、概ねの不具合が出揃うからです。
特に無垢材は調湿して動きますので、
木製建具は、調整が必要になってくる場合も多いと
依頼主さんには、最初にお話ししてあります。
(ご理解がないと、木のものづくりは勧められません)
制作建具やさんも心得ておられて
ありがたいことに、点検には、同席してくださいました。
特に、私が心配していたのは、大きな無垢の桧板を用いた
玄関建具です。
夏の日差しを受けて、木の収縮で、ガラスを割ったりしないか、
ディテールで、調整はしたものの、心配でした。
伺ったところ、そこに関しては不具合がなく、
ホッとしました。
さすが、職人さんも精度良く作ってくださいました。
一方、鍵がかけにくくなったのが、洗面脱衣所です。
浴室を開け放して、お湯を溜められるため、
脱衣室が、かなり湿気ます。そのためでしょうか。
湿気がある側と、ない側があると、板の建具は反ります。
エアコンをかけたりしてもしかり。
鍵穴と鍵のオスの部分が、微妙に
噛み合わないようになっていました。
木枠の上部に、金具を入れるなどして、
建具やさんが調整してくれました。ありがとうございます。
ほとんど、鍵はかけないとのことですが、
来客や、帰省の折に、お嫁さんが入浴される時など
鍵の出番もあるかなと、念のためつけた箇所。
機能できるようにしておくに越したことはないですものね。
その他にも、バリアフリーアドバイザーでもある柿本が
高さや位置など、ご要望とご主人の身体に合わせて
設置した手すりですが、既製品を用いる限界もありました。
各メーカーの中から、一番での長い、
手すりを採用し、使い方のシュミレーションもしたのですが
もっと、出して欲しいとのご要望。
丸い木板を挟んで、前に出して欲しいと施工者さんにお願いすると
丸板がなかったので、各板を削りました。
と、なんだか、オリジナルデザインになっていました。
お手間とらせました。
思いがけない出来事は、裏口のドアです。
前は、塀の石垣に沿って、蔵が立っていたため
これまでは、なかった裏口。
お話を伺っていて、避難時や裏の出入りもあったほうが便利ではないかと、
設計者の提案で新設した裏口です。
その時は、お互いに、滅多に使わないという想定でした。
ところが、実際に出来てみると、便利な様子。
かなりお使いになるそう。
そこで、ご主人自ら、自動で閉まるようにと、
ドアチェックを付けられたのです!
和風のドアに、金属の金物が目立たないように、
色も揃えて購入されたとか。
なるほどねぇ。
あれば、使うという前提で、
便利にしておくことも必要なのだなと、目からウロコだったのと
ご自身でなさることに、感心した次第です。
新設の蔵の破風も、ご自身で、塀に合わせて、
黒く塗られていました。
自発的に住まいに関わらるお姿に、私たちも脱帽ですね、笑。
こんな風に、自分の住まいを、自分の都合に合わせて、
手入れされてきたからこそ、長く保たれてきた
お住まいなのだなと、改めて思うのでした。
これからも、末長く、お使いいただけたら嬉しい限りです。